自宅の庭や畑を自分で管理するために、草刈り機を1台買う。何を基準に選べばいいのか。
カタログを見ると排気量やバッテリー電圧が並んでいて、迷います。ただ、本当に確認すべきことは、そこではありません。
先に自分の失敗から書きます。
自分の場合
以前、安いというだけの理由で、聞いたことのないメーカーの機械を買ったことがあります。周りに使っている人もいませんでした。
結果、市販の汎用チップソーがことごとく使えませんでした。ホームセンターに行っても、合う刃が見つからない。部品を探すのもひと苦労で、しかもすぐに調子が悪くなる。腹が立って、すぐに手放しました。
本体が安くても、刃が手に入らなければ意味がない。刃は消耗品なので、使い続けるかぎり永遠に買い続けるものです。
本体価格は一度きり。刃は一生ものです。ここを取り違えると、安く買ったつもりが高くつきます。
確認すべきことは、この順番
- 汎用の刃が使えるか(規格)
- パワーが足りるか(排気量・電圧)
- 保護具の予算を確保したか
- 本体の価格とメーカー
多くの人が4番から見ます。順番が逆です。
① 汎用の刃が使えるか
ここが最重要です。そして買う前に調べられる唯一の項目でもあります。
「すぐ壊れた」「部品がない」は買ってみないと分かりませんが、刃が付くかどうかは、事前に確認できます。
内径(取付穴の径)

国産の刈払機は、内径25.4mm(1インチ)が標準です。京セラ、マキタ、共立、ゼノア、ハイコーキ、丸山など、主要メーカーはここで揃っています。
一方、内径20mmは一部メーカーの旧型や輸入機に見られる規格です。これに当たると、店頭の汎用品がそのままでは使えません。
自分が失敗したのは、まさにここでした。
外径と排気量の対応
外径は230mmと255mmの2種類がほぼすべてです。機械のパワーに合わせて決まります。
| 排気量 | 適合する外径 | 刃数の目安 |
|---|---|---|
| 20cc級 | 230mm | 36〜40枚 |
| 23cc級 | 230mm または 255mm | 36〜40枚 |
| 26cc級 | 255mm | 36〜40枚 |
| 30cc以上 | 255mm | 40〜60枚 |
刃数は、やわらかい雑草なら36〜40枚。竹や笹、雑木を相手にするなら60枚が目安です。刃数が多いほど細かく刈れて衝撃も減りますが、抵抗が増えてエンジンへの負荷は上がります。
店頭でこれだけ確認してください
- 取付穴は 25.4mm か
- 対応する刃の外径は 230mm か 255mm か
- その規格の刃が、近所のホームセンターに置いてあるか
3つ目が実は一番大事です。ネットでしか買えない規格は、シーズン中に困ります。
② パワーが足りるか
エンジン式の排気量
| 排気量 | 向く用途 |
|---|---|
| 20cc以下 | 非常に軽い。庭先のやわらかい草を短時間だけ |
| 23cc | 軽くて扱いやすい。庭やあぜ道の平地。初めての1台向き |
| 26cc | パワーに余裕。太い茎や小枝でも回転が落ちにくい。土手・休耕地 |
| 30cc以上 | 山林・荒地。自宅管理では過剰 |
農家やセミプロでは25〜26ccが主流とされています。ただ、自宅の庭と畑なら23ccクラスで足りることが多いです。パワーより、軽さのほうが最後まで作業を続けられます。
充電式の場合

充電式には排気量がありません。目安として25cc程度に相当すると言われますが、機種差が大きいので鵜呑みにはできません。
ひとつの整理として、こう言われています。
| 電圧 | パワーの目安 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 14.4V級 | 高さ40cm未満のやわらかい草 | 庭・公園・畝道 |
| 18V級 | 腰高の草、多少固い草まで | 家庭用の中心。自宅管理はここ |
| 40Vmax級 | パワーは文句なし | プロ・業務向け |
自分は18Vの機体を使っていますが、150坪の庭と畑では、バッテリーの本数が現実的な制約になります。パワー不足より先に、電池切れが来ます。
40Vmaxをどう考えるか
パワーだけを見れば40Vmaxに文句はありません。ただ、自宅管理でこれを選ぶのはコスパが良くないと考えています。
理由はパワーではなく、バッテリーと充電器です。
40Vmaxは、バッテリーも充電器も専用品になります。草刈り機1台のために、その規格を一式そろえることになる。草刈りのためだけに、電池と充電器を買い足すという形です。
もちろん18Vでも同じ話ではあります。ただ、決定的な違いがあります。
18Vは、他の電動工具と使い回せる。
マキタで揃えるなら、掃除機、電動ドライバー、インパクト、ブロワなど、18Vのラインナップが非常に広い。バッテリー1本が家じゅうで働きます。
40Vmaxで同じことをしようとすると、掃除機もドライバーも40Vmaxで買い揃えることになります。そこまでやるなら問題ありませんが、草刈り機だけのために40Vmaxを選ぶのは割に合いません。
つまり判断はこうなります。
- すでに18Vの工具を持っている → 迷わず18V。本体だけ買えばいい
- これから電動工具を揃えていく → 18Vのほうが選択肢が広い
- すでに40Vmaxで揃えている、または業務で使う → 40Vmax
本体価格の差より、バッテリー資産をどちらに寄せるかのほうが、長い目で見ると大きい判断です。
バッテリーは何本必要か
カタログには書かれていない、いちばん知りたい部分だと思います。実際に使っている数字を出します。
自分の場合(18V/庭と畑あわせて約150坪)
| バッテリー容量 | フルパワーでの稼働時間 |
|---|---|
| 6.0Ah | 1本あたり約35分 |
| 3.0Ah | 1本あたり15〜20分 |
この敷地を一通り刈り切るのに、6.0Ah換算で5本ぶんの電力を使います。
ただし、5本買う必要はありません。使い切ったら充電すればいいだけです。
3.0Ahだと、同じ作業に倍近い本数ぶんが必要になる計算になります。容量が小さいと交換の回数が増えるので、本数を増やすより容量で稼いだほうが手間は減ります。
では何本持てばいいのか。答えは「一気にどこまでやってしまいたいか」だけで決まります。
- 2本 … 1時間ちょっと作業して、休憩している間に充電を回す
- 3〜4本 … 半日ぶんを止まらずに進めたい
- 5本以上 … 途中で待つのが嫌で、一気に刈り切りたい
つまり本数は、パワーの問題ではなく段取りの問題です。敷地が広いから本数が要る、という話ではありません。
充電しながら回せば、少ない本数でも同じ面積は刈れます。バッテリーを買い足すというのは、「待ち時間を金で買う」ということです。
自分の場合は、暑い時期に何度も中断したくないので本数を持っています。逆に、こまめに休憩を挟むスタイルなら2本でも十分回ります。
ここで注意したいのは、本体を買う予算だけを見ていると、この費用が抜け落ちることです。
充電式は「本体が安く見えて、バッテリーで高くつく」構造をしています。本体+バッテリー複数本+充電器が実際の初期費用です。
逆に言えば、すでに18Vのバッテリーを何本か持っている人にとっては、充電式の草刈り機は本体価格だけで導入できることになります。ここが18Vを勧める最大の理由です。
エンジン式と充電式、どちらを選ぶかは実測を含めて別記事で詳しく書く予定です。
給油の回数は、実はあまり変わらない
「充電式はバッテリー交換が面倒」と言われます。ただ、エンジン式も給油のために似たような回数だけ手を止めます。タンクは無限ではありません。
そのうえ、エンジン式には充電式にない中断があります。
燃料やオイルの状態が悪いと、作業の途中でプスン、プスンと止まる。これが地味に効きます。刈り終わりが見えているところで止まられると、やる気がまるごと削がれる。
この点はエンジンがかからないときの切り分けに詳しく書きました。
静かさは「いつ刈れるか」を変える
性能表に出てこない差で、いちばん生活が変わったのはここでした。
自分の場合
田舎なので、真夏は朝6時前の涼しい時間帯に草刈りをする人が多い地域です。日が高くなってからでは、暑さで作業になりません。
ただ、うちは畑の真横がお隣さんの家です。エンジン式しか持っていなかった頃は、その時間に動かすと騒音になってしまうので、朝の作業ができませんでした。
充電式を買ってからは、エンジン式に比べてだいぶ静かなので、朝に作業ができるようになりました。
これは「静かで快適」という話ではありません。作業できる時間帯そのものが増えたという話です。
真夏の草刈りで、涼しい時間を使えるかどうかは体への負担がまるで違います。熱中症のリスクも変わります。
選ぶ段階で、こう考えてみてください。
- 刈る場所のすぐ近くに住宅があるか
- 自分が刈りたい時間帯は朝や夕方か
- 集合住宅や住宅密集地に近いか
どれかに当てはまるなら、静かさは「あれば嬉しい」ではなく選定の条件になります。
ただし、結論は人によって違う
念のため書いておくと、我が家でも意見は割れています。
自分は電動派です。朝に刈れるようになったことが大きい。
一方で妻は燃料派です。「エンジンのパワーでないと物足りない」と言います。同じ敷地で、同じ草を相手にしていても、そうなります。
体格も、力の入れ方も、何を面倒だと感じるかも人それぞれです。どちらが正解ということはありません。
できるなら、買う前にどこかで実機を触ってみてください。カタログの数字では分からない部分で、好みははっきり分かれます。
③ 保護具の予算を先に取る
ここからは、あまり書かれていない話をします。公的機関が公表しているデータを見ると、本体選びより優先すべきことが分かります。
飛散物は、想像より遠くまで飛ぶ
国民生活センターが2017年に公表したテスト結果によると、刈払機が飛ばした物体の到達距離と速度は、機種によってこうでした。
| 条件 | 到達距離 | 速度 |
|---|---|---|
| 最も遠かった機種 | 67.8m | 130km/h |
| 別の機種 | 30.2m | 76km/h |
| ラップ式 | 16.9m | 48km/h |
67.8m先まで、時速130kmで飛びます。これは自動車が高速道路を走る速度です。
「少しだけだから」と保護メガネなしで作業する人は多いですが、この数字を知ると考えが変わります。自分もそうでした。
事故は毎年、同じ時期に起きている
消費者庁の公表資料では、2015年4月から2020年3月末までの5年間に、刈払機の事故情報が88件寄せられています。
- 刈刃への接触・巻き込まれが半数以上
- 手指の切断など重大な事故が発生している
- 1年のうち5月と7〜8月に集中している
国民生活センターの別の集計(2009年9月〜2017年6月)では約140件、約6割が高齢者でした。
事故が多いのは、まさに草がよく伸びる時期です。つまり誰もが作業する時期に、誰もが事故に遭っているということです。
本体と同時に買うもの
- 保護メガネ(最優先。飛散物対策)
- すね当て(刈刃の接触対策)
- 厚手の手袋
- 長袖・長ズボン・安全靴
厚生労働省の安全衛生教育でも、保護メガネ・耳栓・防振手袋・すね当ての着用が実技項目に入っています。プロが必須とするものを、素人が省く理由はありません。
本体の予算を数千円削ってでも、保護具に回す。これが最も費用対効果の高い判断です。
④ 意外と知られていない、振動の話
もうひとつ、選ぶ段階で見ておくといい数字があります。振動値です。
厚生労働省は振動工具について、1日の振動ばく露量A(8)の基準を示しています。
| A(8)の値 | 扱い |
|---|---|
| 5.0 m/s² を超える | 低減措置が必要 |
| 2.5 m/s² を超える | 低減措置に努める |
そして刈払機については、操作時間の上限が2時間を超える場合、当面は1日の振動ばく露時間を2時間以下とするとされています。
これは業務での話ですが、自宅管理でも意味があります。「今日中に全部終わらせよう」と半日振り回すのは、身体にとっては業務基準を超えた使い方だということです。
マキタやハイコーキなどのメーカーは、製品ごとに「振動3軸合成値」を公表しています。同じクラスで迷ったら、この数字が小さいほうを選ぶ。長く使うほど効いてきます。
結局、どう選ぶか
- 取付穴25.4mm、外径230mmか255mmの汎用刃が使える機種に絞る
- その刃が近所で買えるかを確認する
- 自宅の庭・畑なら23ccクラス、または18V級の充電式で足りることが多い
- 保護メガネとすね当てを、本体と同時に買う
- 同クラスで迷ったら振動値が小さいほう
聞いたことのないメーカーの安い機械は、この1番で落ちます。安さには理由があって、その理由はたいてい買ったあとに支払わされます。
刃の話はチップソーとナイロンの使い分けと交換の目安にも書きました。あわせて読むと、消耗品にいくらかかるかの感覚がつかめると思います。
参考にした資料
- 国民生活センター「刈払機(草刈機)の使用中の事故にご注意ください!」(2017年7月20日)
- 国民生活センター「刈払機(草刈機)の作業中の事故に注意!」(2024年8月21日)
- 消費者庁「刈払機(草刈機)による事故に注意しましょう!」(2020年6月3日)
- 林業・木材製造業労働災害防止協会「振動障害の予防措置(刈払機)」
数値は公表時点のものです。最新の情報は各機関の資料をご確認ください。

